| 今シーズンも前半が終わり、いよいよオールスターが始まろうとしている。現在ヤンキースは宿敵ボストン・レッドソックスに7ゲーム差を付けて首位を独走中。頼みのエース、ケビン・ブラウンが腰を痛めて故障リストに入ってしまったにもかかわらず、ヤンキースが何とかここまでこれたのは本当にありがたい限りである。それにしてもブラウンの問題ばかりでなく、ジーターが4月に記録的な大スランプに苦しんだり、コントレーラスが自らの精神的な弱さを克服できずに打たれまくったり、さらにリーバーがスプリングトレーニングの最後に股関節を痛めて出場できなかったりと難題が続出した前半であった。今シーズンのボストンのアップグレードぶりを考えると、現在ヤンキースがメジャーリーグで最高の成績(55勝31敗)を誇っているのはまるで嘘のよう、ほっぺたをつねらないと夢を見ているような気になる。では、4月には一時4位に転落、最下位寸前だったヤンキースが5月から突然破竹の勢いでトップに躍り出た要因を以下に探ってみた。
● 昨年までヤンキースのコーチだったリー・マズィーリが監督に就任し、テハダ、ロペスなど数々の才能をかき集めて期待されていたボルチモア・オリオールズが意外にも全く精彩を欠き、前半37勝48敗という情けない成績で最下位に甘んじている。ヤンキースはこれまででボルチモアと9回対戦し8勝1敗と圧倒的に勝ち越し、それが勝率に大きく反映した格好となった。ボルチモアはヤンキースの勝ち星マシーンと言っていいだろう。サンキュー、ボルチモア(とマズィーリ)。
● 4月の終わりに1割6分1厘というひどいバッティングアベレージを記録したジーターがその後信じられない復活を見せ、6月には3割9分6厘(ほとんど4割バッター)、7月も3割2分5厘を打って大活躍。現在打点48、ヒット98本、OPS(オンベース・プラス・スラギング).787、というすばらしい成績を残している。我らが松井やシェフィールドがちょっと疲れ気味になった今となっては、ジーターが最大の戦力となっていることは明らかである。先だってのボストン戦でフライを捕るため全速力で観客席に突っ込むなど、守りにおいても彼らしいガッツを見せているし、キャプテンであるジーターのプレイぶりがチーム全体の元気の素となっているのは言うに及ばないことだ。不死鳥ジーターと呼ばせてもらおう。
● シリングを獲得して、ペドロ、ローと並び恐ろしいワン・ツー・スリーパンチとなるはずだったボストンのピッチングローテーション。ふたを開けてみるとデレク・ローが絶不調であるばかりか、ペドロ・マルティネスもヒット不可能ピッチャーから取りあえず打てることは打てるという選手に転落していた。「ガーン、こんなはずじゃー・・」というテオ・エプステインのつぶやきが聞こえてきそうである。特にローの不調は深刻。彼が数年前にクローザーからスターターに転向したばかりの時のように、まるでボールにシャープさがなくなってしまった。自分では精神的な理由ではなく投げ方に問題があるだけと言っているが、原因はその両方にあるという見方が強い。結局すぐに解決できる問題ではなく、このままローが二流ピッチャーのままでいるとなれば、ボストンは今期優勝どころかプレイオフに出場することすら危ういかも知れない。エプステインがランディ・ジョンソン獲得に躍起になっているのもまったくうなずける話なのだ。
● 昨年はスターティング・ピッチャーとマリアノ・リベラの間で頻繁に点を入れられたものだが、今年はポール・クアントリルとトム・ゴードンがいる。カナダ出身のクアントリルは毎日でも投げられるというタフさで有名で、数年前にスノーモービルの事故で大がかりな膝の手術をしたにもかかわらず、これまでに47ゲームに出場して56イニングを投げ、ERA3.05と大活躍。あまり話題に上らない選手だが、「誰も僕に注目しないと言うことは自分が好調でチームに貢献している証拠だと考えている」とクアントリルが自ら分析するとおり、彼のウィン・シェア(チームの勝率に実際に貢献している度合いを測る計算方法)の数字はきわめて高い。ミドル・リリーバーというポジションは決して華やかではないが、それ故に良い中継ぎ投手を探すのは難しい。リリーフピッチャーの鑑とも言えるクアントリルを獲得できたヤンキースは大変ラッキーである。中継ぎ専門のクアントリルとは対照的に、ホワイトソックス時代からフラッシュ・ゴードンの愛称で親しまれているトム・ゴードンは本来クローザーである。しかもリベラに匹敵するメジャーリーグでもトップクラスの守護神なのである。1998年にボストンで46セーブ(セーブ失敗は同シーズンを通じてたったの1回)を記録した彼は、肘の故障に苦しみながらも一流のクローザーとして注目されてきており、オフシーズンには数えきれない数の球団が獲得に乗り出していた。そのゴードンがリベラのいるヤンキースと契約して中継ぎに甘んじている理由は、いつかは優勝したいという夢を叶えたいからに他ならない。そのおかげでヤンキースにしてみればクローザーを二人抱えているようなもの。敵チームからヤンキースとの試合は基本的に7回までと見なされるほど有利な状況となっている。クアントリル、ゴードンそしてマリアノ・リベラがいる限り、ヤンキースの試合終盤における優位性は絶対的。今シーズンの逆転勝ちの多さがそれを物語っているのである。
以上、今季ヤンキースが抱えている難問を補った最大の要因をいくつか挙げたが、これでヤンキースのリーグ優勝は確実と考えるのは早計だ。シェフィールドの肩の調子が悪化してきているし、ブラウンも先行き不透明、しかもこの調子ではジアンビは今シーズン全く戦力になりそうもない(原因は膝?寄生虫?お抱えトレーナーが恋しい?それともステロイドの後遺症?)。アキレス腱を痛めて故障リストに入っていたガルシアパーラが復活してボストンを盛り上げているし、過度な起用がゴードンの肘のケガを再発させている気配もある。カーセイは調整を初めて二ヶ月が過ぎたにも関わらずまだ試合に出られない。不安材料は数え上げたらきりがないのだ。Keep
your fingers crossed!
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