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『発車オーライ』
2005/10/20 UP

マンハッタンには高年齢出産が多いようで、それも世界中のどこかから一人でやっ てきているので親戚など近くにいないような人達が、ここにきて初めてお母さんに なっているふうに見えます。いやほんと、若いお母さんはだいたい親戚ぐるみでこの 辺に住んでる人達の中にしか見ないもの。

ママ友(ウルグアイ人)の従姉妹も3週間前に男の子を出産したばかりで、今日は ちょっと散歩に出たところに会いました。彼女も20代には決して見えないお仲間と見た。「赤ちゃんにしては老けた感じの赤ちゃん」だとは聞いていましたが、それはその彼の、まわりを見渡す目が、必死でもなく、あどけなくなく、ぼーっともしてお らず、しかし注意深そうだったからでしょうか。でも赤ちゃんは赤ちゃん。できたての豆にあんよがちょろりと生えたような可愛らしさとその透明感と存在感はたしかに半径1・5メートルに広がってました。

夏に見た時は、肩にごっそりタトゥーを盛っていたお母さんも、今日は雨交じりの涼 しい午後、黒ずくめに蛍光ミドリのジャケットで、黒い靴には白い縁がついてとってもロッカー。

うちの子がこのくらいだった頃を思い出して「今さぞ大変な時でしょう」と知ったようなことを口にしたら、彼女の答えは「ンー、ザッツ オーライ。」ええーっ。そそそ、そうなのか。みんながみんな、出産後1年は薄暗いジャングルでぜいぜい息切ら してのサバイバルってわけではないのか!「オーライ」ならいいなあ。響きからしていい。日本風の「バックオーライ、バックオーライ」のように、心を落ち着かせてく れる。もしかして、わざとそう言い切って自分をおっことさないようにしているのか、いや本当にそうなのか知れない。

お父さんが勤めているレストランにちょいちょい顔を出すのですが、息子はいつもウェイトレスのお姉ちゃん達にかまってもらえて嬉しそうです。わたしはこの隙に体の緊張を解いているので、きっとべちゃっとなって、疲れた顔をしてたんでしょう、毎度。おねえちゃんのひとりが「彼はいい子なんじゃないの?」と聞いてきました。 「いい子だよ。」としか言えませんでしたが、なんとなくすっきりしなかったので、 あとになってまた考え直してしまいました。

いい子でも、どんなにメロウでも、男の子でも女の子でも、こどもはこども。どこかが引っ込んでればどこかが飛び出てる。世話する人間は体と頭のエネルギーを随分と 消耗してるんですよ。

疲れるばかりの子育てかと思いきや、たまに一人にしてもらったりすると、今度は手持ちぶさたでヘーンな感じが付きまとってくる。一晩一人でいたりするともうとても寂しくて眠れない。いつもはベッドの自分の取り分が30センチくらいしかなくなっ たりして、寝づらくて眠れないのに。

大口一葉 ふかふかまんじゅうキック


そして、子ども連れでなければなかなか思いつかないお楽しみもある。 ガソリン代今高いのにまた車借りて、今度は蒸気機関車に乗ってきました。問い合わせて「今日は走るんですね、間違いないですね」としつこく念も押したので、ばっち り。わたしとて蒸気機関車なんて初めてです。「チューチュー!」とか「シュッシュッポッポー!」とかで形容される汽笛の音は、まったくもって機関車に失礼な気がしてくるほど違ってました。ライオンの吠えるのを「ニャーオ」と表現してるようなものではないですか。あれを表現するなら、顔中の穴という穴を全開にして、 「はーっ!はーっ!」と吠えるのが一番近いんじゃないかと今想像したところです。

さらに、あの「足元」から吹き出す蒸気の迫力やいかに!かっこいー!行けー!切符 を買ってトイレからやっと出てきた2人とぎりぎり乗り込むと、まもなくおねえさんが来て「何かお飲みになりますか?」ビール2本とプレッツェル1個たのんで45分の旅。ある地点まで走ったら、同じ線路を折り返すだけというのは残念な気もしたが、仕方がない。それより、通り過ぎる木が1本1本見えるほどのゆっくりさは感じが いい。しかし座席がざらざらするなあ。窓の外に顔を出して先頭を見ようとすると、 あいたっ!目に灰が入った。触ってざらざらするほどの固い灰が、窓からどんどん入ってくる。2人の頭皮も黒くなってたから私のもそうだったんだろう。しかしうまそうだったのはこどものプレッツェルだった。こっちのスタンドで売ってるのより小振りで、彼もお昼を押しのけて飛び乗っているのではらぺこである。あっというまにひとりで食べてしまったが、香ばしさが一段とあったろうなあ。そういうことなら焼きとうもろこしや焼きイカだって人気が出るぞ。いやいや、ハイジが食べてたパンも香ばしそうな点ではひけをとらない。

私達の乗ってた車両は半分ほどいずれも家族連れで席が埋まっていたが、ビールを 飲んで盛り上がっていたいたのは私達だけのようだった。車掌のアナウンスを聞きな がらお父さんがいつものように、近くの席の人達に向かって「この人一杯やってるで しょ」と真似までしてみせたが、顔をひくひくされただけで、マンハッタンのような反応はなかった。そんなことはどうでもよいお父さんはその後も席をちょこまか動いては息子の写真を取りまくり、手も顔も真っ黒の運転士やエンジニアと記念写真を撮 ることも忘れることなく、機関車を楽しめたのでした。

それが終ればまたいつもの「泣いてわめいて誰かがマジ切れして、謝りあってくだらない冗談言って、笑ってごねてつかみ合ってごねて吠えてごねて頭痛がしてごねてまた誰かがマジ切れして」のネックレス。それでオーライ。

大口一葉 ふかふかまんじゅうキック

New Hope & Ivyland Railroad
32 West Bridge Street, New Hope, PA 18938
(215) 862-2332
http://www.newhoperailroad.com/

★機関車は1920年代に実際に運転されていたものを修復したもので、迫力たっぷりです。
☆「New Hope」駅と1マイル先にある「Lahaska」駅の間を往復していて、どちらの駅でも乗り降りできます。
★機関車の中でディナーを楽しむディナートレインや10月の間は秋の紅葉を楽しむ2時間半の特別イベントもあります。その他にも、バースデイパーティなどにも利用できるそう。



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