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『イーストビレッジの涼 』
2005/05/20 UP

木陰のないプレイグラウンドは、あ、あ、暑い。いや熱い。子どもが転んでもケガが軽くてすむように敷かれている、黒いゴム製の柔らかい床が、フライパンのようだ。ジーンズを履いていた私も暑かったけど、息子の友達のベビーシッターは、いろんなところにピアスをつけたパンクな女の人で、ブラックジーンズが「暑くてさ」と、しゃがんだところにその男の子はやってきて、ヒップボーンのブラックジーンズの、しゃがむと丸出しになる腰とジーンズの間に開いた穴に、シャベルで砂を入れた。

ぎゃっ!と飛び上がる彼女を見て笑うでもなく、暑そうな警察官ジャケットに消防士ヘルメットをかぶったまま、太い眉根を寄せている。彼は根のやさしい子で、たまーにしか会わないのに、息子によくしてくれる。シッターの彼女は「ごっそり入った」「ぴたぴたの服だから、振っても砂が出ない」「これからバーテンダーの仕事すんのに」と小言を並べてはいるけど、笑顔でかわいい。完成間近の手首にうなる刺青も、にこにこと見せてくれた。いい人たちだ。

水の大放出はまだしばらく先なので、涼をとりに公園の芝生の上や、会員制ガーデンにも入り込みます。私自身が田舎育ちで、ナチュラリストと言えば聞こえがヨーグルトのようですが、つまり草むらや土に慣れ親しんでいて、動・植物・昆虫観察の類が好きなのです。田舎でも、たぶん変人だったと思います。

田舎とここが違うのは、どこに生えてる植物も誰かの持ち物なので、子どもの遊び相手にはさせてやれないことです。空き地はあっても足元が危ないし、フェンスで囲ってあるしで、葉っぱをちぎって遊ぶだとか、踏んで歩くなどというのは(おおっぴらに)できないことです。

それはしかたないとして、人間以外の植物を含む身近な生き物が、空に地下に草葉の間にコンクリの割れ目にその植木鉢の中に、きっとその綿埃の中にもいて息をして、生きるのに忙しいのに命をつなぐ努力も惜しまない、と、そんなことは言わないまでも、地から離れた情報が飛び交う地球上で、少しでも地に心を戻せる癖をつけさせる試みが、この常に迷っている変な母に唯一迷わずにできることだと思うのです。

ガーデンは、メンバーが会費を支払い、掃除や整備もし、小さい一区画を割り当てられたら、そこに好きなように植物の栽培ができるというもので、鍵を持ってる彼らが中で作業などしている間、中におじゃまするのです。かたつむり、だんご虫、みみず、蝶々、蛍、てんとう虫、亀、金魚、かまきり等と触れ合えます。果物の木もちょいちょいあって、昨年、リスが手先をあやまってそろそろ食べ頃の梨を私達の目の前に落としてくれたこともあります。うまそうに全部食べた息子は、それからしばらくはリスを見れば何かくれるかと思ってたようですが、彼らは白桃の皮をかじっては、ぺっぺっと下にいる息子の頭上に落とすばかりでした。

トンプキンスの芝生。何が落ちててもおかしくない場所ですが、あのヘルシーなセントラルパークまでなかなか行ってられないので、今日も鳥のさえずりに混じって鎖のじゃらじゃらする音が聞こえる、ここでお茶を濁しましょう。今日子どもと見つけたのは蟻と、瀕死のドバミミズ2匹。鳥に掘り返され突つかれて、食べられずに放っておかれたのでしょうか。人工的な、あまり見たくない落とし物はなかったのはよかったです。

この公園でいいのは、木が大きく沢山あることで、涼しいし、仰向けになると枝葉が目に気持ちいい。さらにいいのは真夏の夕暮れ時で、蛍が飛びます。その数の多いこと、体の大きさ、光るおしりの大きさ、さらに、どこにもきれいな甘かったり辛かったりする水の流れる小川が無いのに生息している、なんだか図太そうで、「蛍」に期待する情緒は無いのですが、これは別物で、薄明るい頃に、草の匂いを嗅ぎながら、沢山の蛍が飛んでるのを見れるのは、涼がとれる以上に、ボーナスです。

(母でなく、「ナチュラリスト」の追記:

こちらに来て驚いたのは、なるほど・ザ・ワールドにも出てこなかったジューイッシュの信仰の厚い人達の姿と、リスの多いことでした。

かわいいですよね。チキチキチキと走って静止、再びビデオテープを再生するみたいにまたチキチキチキ。

この6階の非常階段にも登ってきて、植木鉢を物色していきます。かわいいと思って、多少土を掘っていくのも平気でしたが、ずっと欲しかったあけびの鉢植えを購入して非常階段脇に置きました。柔らかい苗じゃあるまいし、「木質」になっているものは安全だと思っていたある日、その固い木質の、根元がかじり取られて、そこから上の蔓部分が宙に浮いていたのです。なんで根元なんだ?なんでこの子の息の根を止めにゃならんのじゃ?なんでもっと上の方をかじらないんだ?何が目的でこんなことしたんだ?と、これにはハラワタも煮えくり返る思いがしましたが、そういえば以前、ハトよりかわいいドーヴというのがいます。デデーッポッポと鳴くので山鳩だと思うのですが、こいつらは、そのやさしい平和な顔から伸びる鍵型のくちばしで、やっと種から出た愛らしい芽を、一本一本引き抜いては、食べることなく放り投げるのです。気が付くと、猛り狂って窓のごついガードをガシャガシャ叩いていました。

涼しくはなりませんでしたが、生き物のありのままを実感できました。)



大口一葉 ふかふかまんじゅうキック


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